音響振動計測器の基礎知識

振動と振動計

振動測定の重要性

産業界や人間の居住環境で生じている振動は、特殊な場合を除き、無い方が望ましいことは明白です。さらにこの不必要な振動が、機械の寿命を縮め、製品の 品質を悪くし、不慮の事故の原因となり、また振動公害を発生するとすれば、振動問題の解決はまさに緊急な課題となっているといっても過言ではありません。
リオンの振動計は、機械の保守点検や監視、商品の設計研究や品質管理、振動対策、振動工具や乗物などの労働衛生分野、さらに環境振動、地震の記録、 制御、防災にと多方面での振動問題の解決に有効な情報を提供します。

振動の大きさを表す尺度

表1 振動の大きさを表す実用単位

振動の大きさを表すのに、下図のように変位、速度、加速度の3つの尺度があります。
振動現象の相違や測定目的によりいずれの尺度を用いるかは異なりますが、この3者の間には正弦波振動の場合には下式の関係が成立します。
また、振動の大きさを表す実用単位は、表1のものが使われています。


機械振動用の振動計

機械振動の測定に用いる振動計は、その測定対象となる機械の振動によってピックアップを選択することになります。
低い周波数用のピックアップは低加速度を測定するため感度が高くなっていますが、形状が大きく、質量も大きくなって設置時の共振周波数も低くなります。
高い周波数用のピックアップは大きな加速度を測定するために、軽量小型で低感度に設計されています。
リオンでは圧電式とサーボ式の加速度ピックアップを用意しており測定可能な周波数の範囲を広くカバーし、それぞれの特徴を生かした振動計を測定目的に応じて広く選択できる構成となっています。
圧電式加速度ピックアップは概ね1Hz以上の周波数の振動を測定する場合に使用します。
このピックアップは高周波数特性が良好で、特に高い周波数の振動測定に適しているため、プラントなどの設備診断や振動監視に多く使用されています。
圧電式は温度変化によって低い周波数成分の雑音(パイロ)が発生します。
このため、使用に当たっては温度変化を与えないようにします。積分して速度、変位で評価する場合にはパイロ雑音が増幅されるので特に注意が必要です。
なお圧電式ではプリアンプ内蔵を除いてチャージアンプが必要です。
サーボ式はDCまで周波数応答が完全にフラットで、低周波数の雑音も非常に小さく、概ね10Hz以下の測定に使用します。
最近では地震計のセンサにも多く使用されています。サーボ式は測定可能な周波数の上限は約100 Hzです。
なお、サーボ式は専用の電源で動作し、チャージアンプは不要です。

圧電式加速度ピックアップとは?

ある種の結晶に機械ひずみを加えると、結晶の表面に外力に比例した電荷を生じ、電圧を発生する現象を圧電効果といい、圧電式ピックアップはこの圧電効果を持った圧電素子を使用したものです。
圧電式ピックアップは小型軽量で振動加速度および振動数範囲が広く、また高精度・高信頼性で取り扱いが容易なので現在では標準ピックアップとしても使用されています。圧電式加速度ピックアップには圧電素子の利用の仕方により図1のようにせん断型と圧縮型の2種類あります。

図2 せん断型ピックアップの原理

<せん断型>

圧電素子にずれを起こさせる構造で感度が高くとれ、そのため小型化できます。また圧電式ピックアップ特有の温度変化による雑音(パイロ電気出力)が小さく低レベル・低振動数領域での計測には有利です。機械振動、構造物・地震などの低レベル・低振動数範囲の測定、振動監視装置用に適しています。


図1圧電式加速度ピックアップの構造

<圧縮型>

圧電素子の上に重りを乗せた構造です。構造が単純で機械的強度が高いので大加速度、衝撃の計測に適します。


環境振動の測定(振動レベル計)

環境振動の大きさの評価は、人体の振動感覚特性に基づいた測定値である振動レベル(dB)で行われています。これはちょうど騒音の騒音レベルの考え方と同じで、物理的振動量(環境振動では加速度)に人体の感覚特性による補正を行い、その結果得られた測定値を評価の対象としています。
図2は、振動レベル計の JIS C 1510 で規定されている周波数レスポンスです。

  • 図2 振動レベル計の周波数レスポンス許容範囲

設備診断

① 保全のタイプ(考え方)
設備の重要度に応じてタイプを使い分け、最小のコストで最大の効果を生むよう考えます。

・事後保全(BM:Break-down Maintenance)故障したら直すことが基本的な考え方

・時間基準保全(TBM:Time Based Maintenance)故障の有無に関係なく、一定の時間使用した部品の交換や、一定の周期ごとに点検、分解、修理を行うような予防保全(PM:Preventive Maintenance)の考え方

・状態基準保全(CBM:Condition Based Maintenance)機械設備の動作状態を定期的に測定し、劣化の程度を把握して、故障の発生を予知すること、即ち予知保全(PRM:Predictive Maintenance)することにより、点検、分解、修理を行い、部品の交換をすると言う考え方
② 振動法による設備診断技術
振動法は機械設備が運転状態の時、振動測定を行うことにより、設備の異常を早期発見し、設備のメンテナンスを行う方法です。
生産設備に直結した重要設備で特に回転機械設備に有効です。
③ 振動振幅の応答特性
振動周波数によって変位振幅、速度振幅、加速度振幅の応答がことなります。設備診断ではこの使い分けが重要です。
どんな振動が増加するのかを十分理解し、検出したい異常に応じて振動のパラメータを使い分けます。
必要に応じて速度、加速度の両方測ることが必要な場合もあります。
④ 診断方法
・簡易診断法
人により定期的な振動測定を行い、その値を傾向管理することにより機械設備の予知保全を行います。使用測定器(VM-82A、VM-63C、VA-12など)

・精密診断法
振動の信号をFFT分析などにより、機械設備の異常個所を抽出し、点検・修理をします。使用測定器(VA-12、SA-A1とSX-A1VAの組合せ、SA-02など)
 
  • 図3 振動のパラメータ

    図3 振動のパラメータ