振動と振動計

精密診断とは

精密診断は設備診断の手法の一つ、別項目で述べた簡易診断で設備に異常があると判定された場合に、機械が異常となっている原因特定や、発生場所などを特定する技術です。
異常と判定された振動の値から、さらに詳細な情報を得るため周波数分析を行い原因の特定につなげます。
異常が起きている場所の状態を把握することで、機械が故障に至るまでの時間を予測することもできます。
特に回転機械の異常の早期発見に有効です。

周波数分析の必要性

回転機械の構造と周波数分析

回転機械には、モータ・ギア・軸受・ファンなど、いろいろな振動発生源が含まれています。 振動低減対策や異常振動の原因調査を行う場合、振動の大きさを測定しているだけでは必要な情報を得ることができません。 周波数分析を行い、どのような周波数の振動がどの程度発生しているのかを知る必要があります。 図のように、機械から発生する振動周波数は各部位によって異なり、周波数分析を行うことによって振動源を特定することが可能となります。


(振動分析計や周波数分析器を用いて、スペクトルや時間波形を算出します。)

回転機械の精密診断

精密診断によって、異常原因の特定と程度、発生位置の特定などを行います。

エンベロープ分析 測定例

         エンベロープ分析 測定例

◆軸受(ベアリング)の診断

軸受(ベアリング)は外輪、内輪、転動体で構成されますが、そこに傷がある場合、回転したときに振動と傷が接触し、通常だと発生しない衝撃波形が生じます。異常な振動波形に対してエンベロープ分析を行うと、図のようにピークが等間隔に並び、問題となる周波数を抽出することができるため、異常の検出に有効です。軸受各部位の大きさ、転動体数、軸の回転数などを理論式に当てはめて計算すると、並んだピークの一次周波数より故障部位を特定することができます。
※画像内の「▼ピーク」「↓一次周波数」はイメージです。実際の画面には表示しません。



軸受の故障診断では、衝撃波形の繰り返し周期を知る必要があるためエンベロープ(加速度包絡線処理)を使用します。
エンベロープ処理は図のような手順で行われます。
 
ミスアライメント測定例

         ミスアライメント 測定例

◆ミスアライメントの診断

ミスアライメントは、軸方向において、回転周波数の整数倍の振動が大きく現れます。 何倍の振動数が出るのかは、軸受けの継ぎ手の種類によって変わります。 この例では3倍の振動数が大きく現れています。


心ずれ、面開きのイメージ図

ミスアライメントとは?

いわゆる芯出し不良で、カップリングで結合される2つの回転軸の回転中心線が一直線になっていない状態を指します。
心ずれや面開き、およびその複合状態などがあります。
ミスアライメントが起こると面振れの影響で軸受へのスラスト荷重※が増加し、軸受寿命が低下します。

※スラスト荷重とは
軸受の中心線に沿って作用する力で、軸受が回転する際に発生します。


アンバランス測定例

         アンバランス 測定例

◆アンバランス

アンバランスは、円周方向において、回転周波数と同一の振動数成分のみが大きく現れます。
その他の周波数は殆ど発生しません。振幅はアンバランス量に比例します。
回転数が増加すると振幅は回転数の2乗に比例します。


アンバランスとは?
 
回転体の重心が中心からずれている時に起こる不均衡によって発生します。
静的アンバランス、偶力アンバランス、動的アンバランスなどがあります。
アンバランスが起こると軸受けの円周方向の荷重が増加し、軸受寿命が低下します。





 
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